焦れ甘な恋が始まりました
「それじゃあ、スーパー寄ってから帰ろ」
「え!?」
「だって今日、予定ないんでしょ?だから、今日は俺の家で契約通り、手料理作って食べさせて」
「け、契約通り、って……」
そんなの、私は了承していないはずですが……
なんて。そんなことを言う余裕もなく、言うだけ言って、さっさと私から離れた下條さん。
茹でダコのように真っ赤になったまま、一人でその場から動けずに呆然としていれば、いつの間に帰り支度を済ませたのか……
スーツのジャケットを羽織り、手に私が届けに来たファイルと鞄を持った下條さんは、デスクの上に置いてあったらしいキーを取り私に向かって微笑んだ。
「俺、ハンバーグ食べたい」
「ハ、ハンバーグ?」
「味はお任せするけど、付け合わせは半熟の目玉焼きで。あ、ちなみに嫌いな食べ物はピーマン」
まるで、子供ですね下條さん……なんて。
未だ呆然としながらも頭の中で冷静にツッコミを入れれば、突然下條さんに手を掴まれた。
再び触れ合った熱に、慌てて手の中を見てみれば。
そこには車のキーらしきものが、しっかりと握らされていて。