焦れ甘な恋が始まりました
「地下駐車場で先に待ってるから、10分後、俺の車まで来て。なるべく、人に見つからないようにしてもらえると、有り難い。まぁ、バレたらバレたで、俺がなんとかするから別にいいんだけど。でも、こういうのもスリルがあって、関係を盛り上げる一種のスパイスになりそうだし?」
「え、え!?」
「ちなみにそれ、車のキーだけじゃなくて俺の家の鍵も付いてるから、持ち逃げされると俺は家にも入れなくなるってことは頭に入れておいて」
「あ、あの、社長……!?」
「社長室の鍵はオートロックで閉まるから、忘れ物のないように出てきてね。それじゃあ、またあとで」
「っ!」
縋るように伸ばした手。
けれど、それをヒラリと交わした社長は言うだけ言って、さっさと社長室を出て行ってしまった。
う、嘘、でしょ……?
残された私は一人……手の中で存在を主張するキーを見て、ゴクリと喉を鳴らした。
……本当に、私は一体どこに向かってるんだろう。
そう思いながらも身体は社長に言われた通り。
10分後に社長室を出ると、社長が待つ地下駐車場へと早足に向かっていった。