焦れ甘な恋が始まりました
「八百屋のおばあちゃんは、いつも笑顔で旬の野菜を使った料理のレシピを教えてくれたり。それ以外にも、なんの意味も持たない天気の話や、八百屋の前を通った人たちの話をしてくれたり……。
でも、そんな風に過ごす時間が私には小さな癒やしになっていて、仕事の疲れも、おばあちゃんと話している間は忘れられたり……」
言いながら思い浮かべるのは、背の低いおばあちゃんの、可愛らしい笑顔。
「なんかあったら、いつでも言いな。話しぐらいは聞いてやれるからね」って。そう言ってくれた声が、いつも私の心に元気をくれる。
「気が付いたら私は、美味しい野菜を買いに行くだけじゃなく……おばあちゃんに逢いに、八百屋に行くようになってたんです。美味しい野菜を食べて、冷たい都会の片隅で出会った温かな気持ちに、私は小さな幸せを感じます」
――――VENUS(ビーナス)。
私にとっては、実家にいるお母さん……そして、八百屋のおばあちゃんが、そうだと思う。
「だから、私は……VENUSには、そういう施設であってほしいと思うんです。美味しい会席料理を食べながら、女将さんが何気なく話を聞いてくれて、温かいお茶を出してくれる。そこにあるのは、高いコース料理なんかじゃなくていい。ただ……愛情の篭った料理と、温かい心があったら……それだけで、何度でも足を運びたいと思える場所になるはずだから」