焦れ甘な恋が始まりました
 


そこまで言うと、長く、深い息を吐いた。

自分が今……何を話したのか。

正直、言いたいことの全てを明確に伝えられたかどうかは、わからない。


……でも。

伝わればいいな、と思う。

少しでも、狩野くんや企画部の皆……社長の役に立てたらいい。


対したこともできないし、自分本位でしか意見を述べることしかできないけれど。ほんの少しでも参考になれば……本当に、それだけで。



「……とても、参考になりました」


「……え?」


「つまり、一つ一つの商品でユーザーを惹きつけるのではなく、VENUS全体像のあり方を伝えることで、ユーザーをVENUSの虜(とりこ)にする、ということですよね?」


「え……え!?いえっ、そんな、大袈裟な話ではなく……っ」


「また、意見を伺いに、総務部にお邪魔してもいいですか?」


「……っ、」


「正直に言うと……俺は、日下部さんの話を聞くまで、あと3ヶ月でオープンだっていうのに、自分の中でVENUSという施設の根本的な意義や、目的が明確になってない部分がありました」


「……、」


「いくら食事とリラックスをメインにした施設だって言ったって、他の施設とそこまで大きな差を見つけることができなくて、息詰まっていたから」


「か、狩野さん……!?」


「だけど今、自分の中で明確なビジョンが見えました」


 
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