焦れ甘な恋が始まりました
 



そこまで一気に言うと「ふんっ」と鼻を鳴らして、ソッポを向いてしまった小出ちゃん。


そんな小出ちゃんの後頭部を眺めていたら、再びジワジワと涙腺が緩んで視界が滲んだ。


思わず唇を噛み締めて涙を堪えれば、私に背を向けたまま、小出ちゃんが静かに立ち上がる。



「あ、あの、小出ちゃん……っ」

「……報告は、次のランチでお願いします」



私の言葉を遮って、それだけを言い残すと、コツコツとヒールの音を響かせ去っていく背中を、私は呆然と見つめるしかなかった。


そのまま彼女はマイクを持つ新郎の隣に座ると、驚く彼のグラスを奪って男らしく……一気飲み。


そんな小出ちゃんを、新郎の旦那さんはオロオロと見つめながらも、彼女を支えるように肩に手を回した。


……ごめんね、小出ちゃん。そして、ありがとう。


心の中で零した言葉はきっと、優しくて強い……素敵な彼女に届いただろう。


気が付けば外は夜に染まっていて、温かな灯りだけが私たちを包むように照らして佇んでいた。


 
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