焦れ甘な恋が始まりました
 


背後から、力強く腕を引かれて。

弾けるように振り向けば、そこには見たこともないほど必死な様子の社長が、縋るように私を見つめていた。



「とにかく、謝るから……。だからもう一度だけ、話をさせてほしい」



今にも泣きそうな、眉を八の字に下げている社長を前に、どうして社長がそんな顔をしているのかと疑問が募る。


けれどその間に、ゆっくりと降りてきたエレベーターが、もうすぐまで来ていると知らせる表示を見た社長は――――



「……っ、早く!」

「っ、」



再び私を強引に自身の車の前まで連れて行くと、今度は壊れ物を扱うように丁寧に、私を車の中へと誘った(いざなった)。


 
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