青空の魔法
「はい終了! そろそろ片づけて下校しろ」

教室に担当教師の声が響き渡った。

自習室の閉館時間は夜10時。

いつのまにかそんな時間になっていた。


ラストまで残っている人は少ない。

アミノみたいに1,2時間勉強して帰っていく生徒がほとんどで、こんな時間までいるのは、いつも同じ顔ぶれだった。

学年もクラスも違うから言葉こそ交わさないが、いつのまにか顔馴染みになっている。


「大月、まだ終わらないのか? 教室締めるぞ」

先生の声に振り返ると、3年の大月さんがまだペンを握り、演習ノートにかじりついていた。

問題を解いているとこなのかな? じっと机上を見つめている。

「大月?」

先生に肩を叩かれて、男にしては華奢な身体がビクッと揺れた。

自習時間が終わったことに、彼は今初めて気がついたようだ。


「さすがだな、大月。すごい集中力だ」

「あ…、すみません」

先生の褒め言葉に、大月さんは掠れた声でそう答えただけだった。
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