オフィスにラブは落ちてねぇ!!
愛美が“11時で大丈夫です”とメールを返信すると、またすぐにメールが届く。


“愛美に会えるの、
めちゃくちゃ楽しみ。
早く会いたい。”


声だけでなくメールまで甘いのかと、愛美は頬を赤らめながら、スマホをテーブルの上に置いた。

無意識に口元がゆるんでいる事に気付き、誰が見ている訳でもないのに、慌てて口元を引き締めた。

(そりゃまあ…デートなんて久しぶりだし…?支部長とは初めてのデートだけど…。それでも浮かれ過ぎだから…。)

心ではそう思いながらも、着て行く服に悩んだり、何度も時計を見たりしている自分に気付いて苦笑いする。

(でも今日は…せっかくだから、何も考えずに思いっきり楽しもうかな…。)



散々悩んで洋服を選び、いつもより丁寧に化粧をした。

髪型も少し変えてみようかと、ハーフアップにしてお気に入りの髪飾りをつけた。

(うん、大丈夫…って、何が?)

支部長に気に入ってもらえるかな、などと考えながら鏡の前でドキドキしている自分がいる。

何度も時計を見て、あと何分で支部長が迎えに来る、などとソワソワしている自分がいる。

ふと冷静になると、そんな自分が滑稽にも思えた。

(今からこんなんで大丈夫か、私…?)



10時50分。

愛美のスマホがメールの受信を知らせた。

(あ…支部長、もう着いたのかな?)

愛美は微かに笑みを浮かべながらスマホを手に取り受信画面を開いた。

“ごめん。
急に得意先の会社に
行く事になった。
遠方だから少し帰りが遅く
なるかも知れないけど、
戻ったら必ず連絡する。”


緒川支部長からのメールを確認した愛美の顔から笑みが消えた。

(なんだ…。結局またこれか…。)









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