sweet♡marriage〜俺様御曹司と偽装婚約〜
運良く、彼女の声は俺と古賀の二人しか聞こえていないようで、社員たちは普通にパソコンに目を向けていた。
「別に彼女が言ったわけじゃないよ。貴方の演技が馬鹿馬鹿しくてすぐにわかったわ。会長も社員もみんな騙して……一体貴方何考えてるの……」
美山麗香とは8年以上の付き合いになる。
気づかれていて当然なのかもしれないが…
「その理由を麗香に言う必要はあるか?……ないだろ。」
「そうだけど……私は心配して………」
「司さん、旧友と名乗る方からお電話ありまして、今本社の前に来てるそうです。」
ピリッとした雰囲気の中、一人の社員が言った。
「ああ、すぐ行くと伝えてくれ。」
立ち上がる俺を見て美山は諦めたように口を閉ざし、デスクに戻って行った。
旧友なんぞ馬鹿馬鹿しいことを言うのはあの男しかいないだろう。
応接室に向かうと、深くソファーに腰掛け優雅にコーヒーを飲んでいるあいつがいた。
「やあ、2日ぶりだね。司クン。」
開いた扉を既に閉めたい衝動に駆られながらも、俺はソファーに腰を下ろした。