ジー・フール

靴が汚れてしまった。
全く残念だ。
買ったばっかりだったのに、白い靴はすぐ汚れが目立つから嫌いだ。
泥。地面は茶色い。
けど、黒い。

何故男たちは銃で僕を撃たないかだって?
その答えは簡単だ。
男たちには僕を殺せない理由がある。
その理由が知りたいだって?
それも禁句だ。
僕にもわからないのだから。

「待て!止まれ!」
1人の男が声をあげる。

しかし、僕はその声など聞き流すだけ。
走ることはやめない。

腕に水。
一粒頭上から降ってきた。
その粒はあっという間に増えていく。
雨だ。赤い雨。
血の色。濁った色。
神の涙にしては汚い。
僕を祝福してくれている?
いや、その逆か。

僕に限界と言う言葉は似合わない。
可能性はある。
それを潰すか、利用するかは自分次第だ。

気が付けば、街の匂いも薄れてきた。
地面にも変化が出てきた。
見なくてもわかる。
感触。草の湿る音。
ピチャピチャと言う音は、雨なのに聞こえなくなった。
クシャクシャと踏まれていく草の音か。

目が慣れてきた。
手で草を切りただ走る。

< 3 / 93 >

この作品をシェア

pagetop