ジー・フール
「ドヴォルザーク」
「どぼる…?」
「ドヴォルザークって人が作った曲なの。煙草くれるかしら?」
僕は透かさず煙草を渡して、火をつけた。
煙が舞ったところで続きを話しはじめる。
「交響曲第5番。へ長調」
「詳しいんだね」
「昔やってたから」
「へぇ〜」
僕は関心してしまい、彼女を見つめた。
「楽器は?」
何を演奏していたのか気になった僕は、彼女が説明する前に尋ねてみた。
「ヴァイオリン」
「かっこいいね」
僕は内心からそう思った。
ドヴォルザーク
交響曲第5番
へ長調
作品76
第1楽章の繰り返しを含み約40分の演奏時間
チェコの作曲家であり、「新世界」で有名だが、この曲はあまり知られていない
穏やかだと感じられたが、それは裏切られる。
裏切られるという言葉は間違っているかもしれないが、確かにいい意味で僕を満たしてくれるのだ。
クラリネットの軽やかな曲調を、次にフルートがリピートする。
急激に盛り上がり、ほぼ全ての楽器が加わり華やかさを演出する。
ヴァイオリンが現れると強弱の激しさが増す。
僕の心も乱れはじめる。