14年目の永遠の誓い
「泣かないで、ハル」
カナはベールの中に手を伸ばして、わたしの涙をそっとぬぐい取った。
「……あ、……わたし、」
「驚いた?」
言葉にならない想いを汲み取ってもらい、思わず小さく頷いてしまう。
カナは悪びれもせずニコッと笑顔を見せると、そのまま前を向いてゆっくりと歩き出した。
あっという間に祭壇の前に着き、今度は神父さまの笑顔が目に飛び込んできた。
なんだか、すべてが夢の中で進んでいるかのようで、気が付くとブーケはわたしの手にはなくて、
神父さまの言葉もふわふわ移ろいながら、飛び去っていく。
そうして、はっと気が付くと、あの有名な誓いの言葉が読まれている最中だった。
「健やかなるときも、病めるときも、
喜びのときも、悲しみのときも、
富めるときも、貧しいときも、
これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
隣から、カナのしっかりとした声が聞こえる。
続いて、神父さまの視線がわたしに向けられた。
「牧村陽菜さん、あなたは、広瀬叶太さんを夫とし、
健やかなるときも、病めるときも、
喜びのときも、悲しみのときも、
富めるときも、貧しいときも、
これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」