14年目の永遠の誓い
「……ハルに、会える?」
「5分だけなら許可しよう」
「せめて30分」
オレが言うと、おばさんはプッと吹き出した。
「調子戻って来たね。でも、ダメ。まだ、しゃべったりする体力ないから」
それ以前に、夜9時を過ぎている。病人を見舞う時間じゃない。
それも分かってる。
だけど、会いたいんだ。
「側にいるだけで良いし、ハルが休む邪魔はしないよ」
「10分」
「もう一声!」
おばさんは、苦笑いしつつ、
「陽菜の様子を見て、大丈夫そうなら最大15分」
と言った。
おばさんは、話題を変えたのを受けて、オレが納得したと思っただろうと思う。
だけど、オレは納得なんて、まったくしていなかったんだ。
きっと、おばさんが正しいんだ。
オレがその場にいたって、何もできない。
心停止で蘇生に入ったら、部屋から出される。
過去、オレは存在を忘れられたまま、病室でハルが心肺蘇生を施されるのを目撃した。
それは、衝撃的な光景で、側にいながら何もできない状況は、胸がつぶれそうに辛かった。
でも、だからって生死の境で闘うハルを一人にしておきたいなんて思いもしない。
何もできなくても、少しでも近くにいたいと思うんだ。
ICUに入っている間は、側で付き添うこともできない。
それでも、知らずに遠くで笑って過ごすより、少しでもハルの近くで回復を祈りたい。
例え胸がつぶれそうにツラくても、オレはハルの容態を知りたかったし、少しでも近くにいたかった。
ハルが会いたいと言ってくれた時に、すぐに飛んで行ける場所にいたかった。