14年目の永遠の誓い
おばさんに連れられて、過去何度か足を踏み入れたICUに入室する。

機械音が耳に響く。

状態の悪い患者さんばかりのこのスペースは、普通なら家族しか入れてもらえない場所。
そこに、こんな時間に入室できる特別扱いだけで、オレは満足しなきゃいけないのだろうか?

おばさんの背中の向こうにハルのベッドを見つけた。

……ハル。

オレははやる気持ちを抑えつつ、早足でハルへと向かって歩いて行った。

おばさんは、自分を追い抜いて行くオレを、苦笑いしながらも止めなかった。



「ハル」



大丈夫? なんて聞けない。

呼吸器の挿管こそしていないけど、ハルは酸素マスクを当てられ、点滴や心電図などたくさんの管につながれ、機械に囲まれていた。

顔色はひどく悪い。

オレが手を握ってしばらく後、ハルはゆっくりと目を開けた。



「……カ…ナ?」



ささやくように小さなハルの声は、かすれていた。



「遅くなって、ごめんね」



オレが謝ると、ハルは小さく首を振った。

そして、頭を動かしたせいでめまいでも起こしたのか、キュッと目をつむって眉根をしかめた。



「ハル、返事は良いから。……ごめんね、しんどい時に」



オレの言葉に、ハルはかすかにほほ笑むと、荒い息の下、ささやくように言った。



「おか…え、り」


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