14年目の永遠の誓い
晩春から勉強していた投資は、初夏には実地訓練。夏の終わりには本格投資を始めていた。
「資金は? 融資が必要なら……」
明兄は本気で、最短でオレを稼げるように仕込んでくれるつもりらしく、珍しく優しい事を口にした。
「元手ならあるから大丈夫。種から育てなくてもいけるよ」
父方の祖父の遺産という名の資金が、オレにはあった。
もちろん、自分の自由には使えない。事前に親父の許可は取ってある。
「面白い、やってみろ」
投資をやってみたいと言うと、親父は本気で愉しそうに笑った。
「……お前、才能あるぞ」
オレの運用状況をチェックしていた明兄に、着手半月目に言われた。
長い付き合いだけど、初めて、本気で明兄に褒められた。
かなりテンション上がった。
「こういうのはテクニックも大事だけど、最後は引きがあるかどうか。当たりくじを引き寄せる運があるかどうかだ。
お前には、それがある」
オレ、運は良い方なんだ。
任せてよっ!
といい気になったオレは、後から明兄の言葉の真意を聞いて、肝を冷やした。
明兄が失敗すると読んだ「良い勉強」になるはずだった幾つかの株が、逆に上がるという不思議な現象が起こっていたらしい。
話を聞いて改めて分析してみれば、確かにそれは手を出してはいけない銘柄だった。
失敗していれば、資産は半分になるところが、何故か逆に5倍に跳ねていた。