14年目の永遠の誓い
ハルの誕生日の前日、オレは指輪の入った小ぶりな紙袋を勉強机の上に置いて、物思いにふけっていた。
いよいよ、明日がハルの十七歳の誕生日。
なんて言ってプロポーズしよう?
何度も考えて、ある程度成り行きに任せようと決めたのに、いざとなると、やっぱり台本が欲しくなる。
……オレの18の誕生日に、結婚してください。
結婚は、19や20じゃくて、4ヶ月と少し先に来る18歳の誕生日だ。
そこは、ちゃんと伝えなくちゃ。
そんなことをつらつらと考えている内に、いつの間にか、時計の針は0時を越えていた。
席を立ち、視線を向けるのは窓の外。斜め下に見える隣家の一階にあるハルの部屋。
こんな時間だ。ハルの部屋の窓は予想通り真っ暗だった。
もし、具合が悪かったりで人の出入りがあると、分厚い遮光カーテンの隙間から明かりが漏れてくる。
だから、真っ暗なのは、悪いことではない。
けど、そこにハルの気配が感じられないのは、少し寂しかった。
「……ハル、誕生日おめでとう」
オレは人知れずつぶやく。
安眠妨害する気もなく、ハルがメールを好きじゃないのもあり、バースデーメールも送らない。
すべては夜が明けてからだ。
「ハル、大好きだよ」
オレは窓の向こうのハルに向けて、そっとつぶやいた。