キスは目覚めの5秒後に

最後のページには、私と橘さんがなにかを話してるショットが見開きにして載っている。

こんなところ、いつの間に撮ったのだろうか。

着ている服から察するに、バッグが見つかったと教えてもらった日のシーンっぽい。


「そのタチバナ最高でしょ?愛が溢れた顔してるわ。シャッターチャンスを逃さなかったのよ!」


レベッカが、私を褒めて!みたいに笑う。

仕事が一段落して比較的時間のあった彼女は、いいショットが撮れるように私達をちらちら見ながら仕事をしていたそう。

でも、これが愛かどうかは置いといて、確かに橘さんは優しい顔をしている。

オフィスではムスッとして怖い顔をしていたことが多かったから、こんな表情をするのはレアなことだ。


「すごく嬉しいわ。大切にする。みんなもありがとう」


名残惜しくてみんなと離れられないでいると、橘さんがそろそろ帰るぞと促してきた。


「タチバナー!」

「いつも独り占めー!」

「今日が最後なのにー!」


橘さんはみんなから盛大なブーイングを浴びている。

日本女子とは違って、ブーイングの仕方に迫力があってとても怖い。

それでも彼は焦る様子もなく、涼しい顔をして言った。


「あー、静かにしろ。明日のパーティにはミヤコも行くから。そこで話せばいいだろう」

「ミヤコも来るの!?本当!?」


エレンたちの顔がパーッと輝いてあっさりと騒ぎがやみ、じゃあまた明日ねミヤコ!と離れていった。

みんな気持ちの切り替えが早い。


でも明日はみんなも招待されているんだ。

どんな服を着てくるのか、帰国前の楽しみがひとつ増えた。

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