キスは目覚めの5秒後に
逞しい腕の中で何度も達してしまい、疲れきって横たわる私を気遣うように、彼の指が髪を優しく撫でる。
普段イジワルなのに、ここぞというときに優しさを見せるなんて、本当にズルイ男。
「橘さん・・・お願い、朝まで抱き締めていて」
手を伸ばして懇願すると、彼は力強く応えてくれた。
その夜は、そのまま逞しくも優しい腕に包まれて眠りについた。
月明かりに照らされる彼の寝顔をしっかりと目に焼き付けて――
朝、まだ日が昇らないうちに起きて、眠る彼の頬にキスをする。
私は彼が好き。
このまま腕の中にいて、彼のおはようの声を聞いてしまえば離れたくなくなってしまう。
彼に見送られたら、きっと私は、ずっとここにいたくなってしまう。
だから、このまま――
「さようなら。私、あなたが好きだったわ」
体に絡みつく腕をそっと解いてベッドから抜け出す。
なるべく物音を立てずに身支度を整え、置き手紙を書いてマンションを後にした。
「橘さん、本当にありがとう・・・」
飛行機は、日常が待つ日本へと飛び立った。