危険な愛を抱きしめて
 ……貰ってもつけねぇよ。

 女じゃあるまいし。


 光モノなんざつけて喜ぶ趣味はねぇ。

 笑って、そう言おうと由香里を見れば。


 由香里は。

 すげー、真剣な顔をしてた。


「……雪。
 ……面倒くさがらずに心臓の薬、ちゃんと持ち歩いてる?」

「……なんだよ、それ」

「その、ペンダントヘッド。
 薬が入るようになってるから……」

「コレに入れて、持ち歩けって?
 うわ、超~~じじくさ」

「雪!
 笑い事じゃ、ないのよ?」


 由香里の黒い瞳が揺れる。


 ……泣く?


 ……しかたねぇな。


 由香里の涙に腰が引ける自分が情けない。


 でも。


 どうしても。


 ……泣かしたくないやつ、っていうのはいるわけで……

 しかも、お互いの事情を知っている以上。

 ……無下に断るわけにも行かなかった。

 それに。

 こんな小さなもの。

 持っているだけで由香里の気が治まるのなら、別にどうということもないし。

 オレは、肩をすくめると。

 もらったペンダントを、その場でさげた。

 
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