危険な愛を抱きしめて
 
 夜。

 二階の病室から眺める庭は。

 立木が茂って、月明かりでできる木陰が、余計に暗く見える。

 その木々を縫うように。

 白く。

 ふわふわしたものがまるで、踊るように歩き回っていた。

「幽霊………なんてことは……」

 無いはずだ。

 ……多分、それは見間違い。

 いや、もしかしたら……?

 明らかに、壊れかけの心臓には悪そうな、白いふわふわを、こっそり見れば。

 歌は、そのふわふわから、流れているようだった。


 ………天使……?

 その、細く、繊細な歌声は。

 恨みのこもった、悲しい『幽霊』のつぶやきよりも。

 地上に遊びに来た、天使の笑い声だ。

 まるで夢を見ているかのように。

 ぼんやりとその白い姿を眺めているうちに……

 オレは、天使と、目が合った。

 



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