危険な愛を抱きしめて
「……由香里。
何をしているんだ……?」
今日は、変な日だ。
由香里を二回も【天使】と見間違うなんて。
中身は、明らかに怪獣なのに。
戸惑うココロを隠すように声をかければ。
由香里は、オレにすぐに気がついて、ふふふふふ、と声を出して微笑んだ。
「さ・ん・ぽ」
「……それは、見れば判る。
でも、なんだって、こんな夜遅くに……」
「な・い・しょ」
由香里は、あっさり僕の質問をはぐらかし。
オレのいる病室の下へ歩いてきた。
そして、手に持っていた四角い白い手提げつきの箱を地面に下ろし。
両手を、オレに向かって、まるで芝居をするようにさし伸ばし、言った。
「おお~~
愛しきジュリエット。
お前の、白き顔は、満月も恥らうほど美しく。
その、輝く瞳は千の星を集めたよりも、強く鮮やかに光り輝く……」
「……なんだよ、それ」
オレがあきれて言うと、由香里は、手を下ろしてにこっ、と笑った。
「シェイクスピアのロミオとジュリエット。
……知らない?」