鈴木くんと彼女の不思議な関係

「やっぱり、みんな美人なのか?」
「どうだろう。そうでもなかった気がするんだけど。なんていうか、ゼンゼンダメだった。土地勘もないし、みんな関西弁だし。独りでいるのが私だけに思えて、居心地悪くて。完全に呑まれた。」

 何のコネもなく最終面接までたどり着いただけでも、大したものだと思うが、家族のサポートもないとなれば、入学してからだって相当キツいだろう。

 清水の家族は彼女が女優になることにあまり乗り気ではないらしい。宝塚に入団したからといって女優としての将来が保証される訳ではない。清水は勉強もそれなりに出来るのだから、このまま大学へ行き就職してキャリアを積む事だって出来るのだ。無難な道へ進んで欲しいと思うのは親として当然だ。

「もういい。勉強して受験して、大学行きながらまた考える。横浜出身なら、宝塚じゃなくて、四季よね。」
「そうかもな。」

 俺はもう一度清水をバス停まで送って別れた。もう一度、あたりを見回したが、不審な人物は見当たらなかった。あの男のやる事は俺の理解を超えているが、よく聞く話でもある。美人には美人の苦労があるんだな。だからって同性愛に走らなくてもいいのに。。

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