ユメガタリ
終わり
 珍しく自然に目が覚めた。長年一緒にいた目覚まし時計が壁辺りで崩壊していたんだから当たり前だ。どうやら昨日投げたのはあれだったらしい。もはや時計としての機能を微塵も果たしていない。仕方ないからケータイの時計を見る。12時10分。今から着替えて顔を洗って歯を磨いて仮病の電話をして出たらいい時間だろう。
 電車に揺られながら、時が流れるのを眺める。一時間半もの間、窓の外の風景を眺め、入れ替わる人を観察し、思い出したかのように駅に止まる電車の時間を計った。……暇だ。せめてもの幸いなのは腹は減っていないことだろう。来る途中にコンビニで買ったパンを歩きながら食べた。
 パソコンで調べた最寄り駅で降りる。こんな時間帯だからか、他に降りる人は数えるほどしかいなかった。しばらくその場で突っ立っていたら後ろで電車のドアが閉まった。見えなくなるまでその場に立ち尽くした。さぞかし変な人間に見えたことだろう。
精算機に切符を突っ込んで足りない分の金を払ってホームから出る。駅員に目的地をダメもとで訊いたら珍しいことに知っていた。なんでも近所なんだそうだ。親切に教えてもらった後、「理由は?」って訊かれたから「遊びに行くんです」って答えた。別に間違ってはいない。日本語の便利さにちょっと感動した。
 どこかの風景を切って貼り付けたような街中を駅員の言葉を思い出しながら歩く。途中で目覚まし時計を買った。今朝壊したやつの値段よりも安かった。ちょっと嬉しい。
5―33。ちょっと迷って30分経ったところでようやくたどり着いた。たぶんこれだ。
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