腹黒王子に秘密を握られました
「すいません。突然泊まることになっちゃって……」
金子のそでをひっぱって小声で謝ると、静かに笑って首を横に振った。
「いや、居心地がよすぎて帰りたくないと思ってたから、逆に嬉しいくらい」
くつろいだ様子で微笑んでみせる金子に、思わずみとれた。
これは会社で見せる完璧王子の社交辞令なんだろうか。
こいつの腹黒な本性を知っているはずなのに、優しい言葉を鵜呑みにして騙されてしまいそうだ。
外はすっかり暗くなり、窓の外の景色は闇に沈み、風に揺れる木々のシルエットがぼんやりと浮かぶ。
窓ガラスは明るい室内の様子を反射して、そこにはいかにも幸せそうな温かな食卓が写っていた。
「莉央さんから、柱の話を聞いて、ぜひご両親にお会いしてみたいと思っていたんですよ。だから、こうやってゆっくりお話しができてうれしいです」
「柱の話?」
金子の言葉にお母さんが首を傾げる。
「前に内覧のあとで話した、いい家族が住む家の柱は温かいって話ですか?」
「そう、それ。きっと莉央さんの実家の柱も、温かいんだろうなって」
「あー、それね。お父さんのプロポーズだったのよ」
私たちの会話を聞いたお母さんが、嬉しそうに頬を染めた。