腹黒王子に秘密を握られました
「あ、そいうえば金子さんには俺がちゃんと友野さんの様子報告してましたから」
そう言われ、パスタを噛みながら「ふぁ?」と首をかしげる。
「熱計ろうと思っておでこにさわったら『もっとさわって』っておねだりしてきましたよ。とか、熱が出てるときの友野さん、甘えん坊でかわいかったですよって」
「てめぇ、余計なことを……っ!」
なにがおねだりだ!
なにが甘えん坊だっ!
「彼女の家に勝手に入りこんで看病なんてしたらヤキモチやいて怒るかなぁと思ったんですけど、『看病しやってくれてありがとう』ってすごい綺麗な笑顔で言われて、特にリアクションなかったですよ。さすが金子さんは女にモテるから、余裕ですよねー」
「……」
そりゃそうだ。
ただの女除けのためにたのまれた偽物の恋人なんだから、金子が私にヤキモチを妬くわけなんてないんだ。
なに傷ついてんの私。
意味わかんない。
パスタをつついていたフォークが止まる。急に食欲がなくなって、口に入っている物を咀嚼するのも面倒になった。
全部吐き出して、叫びだしたい気分。
一体なんて叫べば気が済むのか、まったくわからないけれど。