腹黒王子に秘密を握られました
「友野さん、これ専任契約もらったから、情報登録しておいてもらえる?」
そう声をかけられ顔を上げると、金子が書類を持って立っていた。
「あ、はい」
慌てて受け取り確認すると、拓斗くんのおうちだった。
「これ、拓斗くんのご両親、うちに任せてくれたんですね」
驚いて思わずそう口にする。
柴崎くんがあんなに失礼なことを言ったから、もううちとは関わりたくないと言ってくるかと思った。
「まぁ、柴崎が失礼なことを言った分、俺がちゃんとフォローしたから」
どうやら後からシックハウスの検査の資料を集めたり、引っ越し先の物件の相談に乗ったりしていたらしい。
さすが、抜け目のない男だ。
そう思いながら金子のことを見上げる。
伏せたまつげがすごく長い。
すっと通った鼻筋と、無意識の時も微かに口端が持ち上がる綺麗な唇。
上品で穏やかで優しげな、完全無欠の王子様。
でも私は、その唇が意地悪に歪むのを知ってる。
形のいい眉を片方だけ上げて、茶色の虹彩の瞳を細めて、見下すように人を笑うのを知ってる。
喉の奥が見えそうなくらい大きな口を開けて涙ぐむほど大笑いするのを、些細なことで大人気なく怒ってアイアンクローをかましてくるのを、よっぱらうとくつろいだ表情でとろんとした瞳になることを。
全部全部、知っているのに。
もう、そんな素の姿を、見ることがないんだな。
そう思いながら、金子の顔を見上げていると、すっと顔をそらされた。
「悪い、そうやって、あんまり見るな」
目をそらしたままそう言われ、ショックで胸がずきんと痛む。
「……すみません」
小さくつぶやいた言葉は、自分の声じゃないみたいに、弱々しく聞こえた。