腹黒王子に秘密を握られました
 

俯くと視界に入った自分の指先。

ペンを持つ右手が、動揺で微かに震えていた。

なに動揺してんだ私。
すごくモテる金子が、すぐに彼女が出来たって、少しも不思議なことじゃない。
むしろ、女除けのためとはいえ、私なんかに恋人のフリを頼んでいたことのほうがおかしかったんだから。
少しの時間とはいえ、偽物の恋人として一緒にすごせたことは、ありえないことだったんだ。


金子がくれたフィギュア。
ふたりで見た映画。
私の実家で、家族そろって食卓を囲んだあのひと時。


楽しかったそれらの記憶は、私が恋愛感情を自覚した途端、すべて切ない痛みに変わってしまった。

震える息を吐き出して、なんとか平静を装う。
ゆっくりと顔を上げると、金子と視線が合った。

金子は静かな表情でこちらを見ていた。

柔らかな前髪の間からこちらを見る、明るい虹彩の綺麗な瞳。
その瞳に見つめられると、心の中をすべて見透かされてしまうような不安に襲われて、私は顔を伏せてその場から逃げ出した。



これだから、三次元は嫌なんだ。

自分の気持ちひとつで、物事が全て色を変える。



複雑で面倒で厄介で難解で、いいことなんてひとつもない。



 

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