腹黒王子に秘密を握られました
自分に言い聞かせるようにそう思いながら、まとめたゴミを持って廊下に出ると、うしろから柴崎くんが追いかけてきた。
「友野さん」
「なに?」
「泣きそうな顔してますよ」
「放っておいて」
「そんな顔されたら、放っておけません」
柴崎くんはイライラしたようにそう言って、私の手首を乱暴に掴んだ。
振りほどこうとしたけれど、柴崎くんの力は驚くほど強くて、びくりともしなかった。
「友野さん、なんで金子さんなんですか。やっぱり、仕事もできて性格もよくて完璧な男がいいんですか?」
低い声に滲んだ劣等感。
いつか聞いた柴崎くんのお兄さんの話を思い出す。
どうして柴崎くんが私に執着するのか、わかった気がする。
運動も勉強もできて、健康だったお兄さんに、ずっと劣等感を抱いていたんだ。
そして、そんな兄に似た金子から、何かを奪ってやりたかったんだ。
そんなくだらないこだわりで、好きでもない私と付き合ったって、なんの意味もないのに。
その時、廊下の向こうから誰かが歩いてきた。
廊下で柴崎くんに掴まえられて身動きの取れない私を見て、不愉快そうに眉をひそめるのは、相楽真子。
「友野さん。また社内で男漁りですか? サイテー」
「ちが……っ」
慌てて否定しとうとした私の言葉を遮って、柴崎くんがにっこりと笑った。
「そうですよ。俺たち付き合いはじめたんです」
「はぁ!?」
「ねー、友野さん」
反論したらオタクだってバラすぞ、というように、ギリ、と私の手首をつかむ指に力をこめる。