腹黒王子に秘密を握られました
 

『あんたが帰って来るって言うならそれでもいいけど。でも金子くんは? あんたそうやって泣くくらい、金子くんのこと好きなんでしょ?』

「金子さんはもう、新しい彼女いるもん」

『告白もしないで諦めるの?』

「できるわけないよ。私みたいな根暗な腐女子、相手にされるわけないよ。変人だって、気持ち悪いって思われてるんだ、きっと」

ぐずぐずと泣きながら電話で話し続ける私を、道行く人が不思議そうに見ていく。
でもそんな視線を気にする余裕もなくて、ぼろぼろ涙を流しながら、当てもなく必死に歩いた。

『そうかしら。付き合ってるのは嘘だったんだとしても、金子くんがあんたの隣にいて楽しそうにしてたのは演技には見えなかったし、みんなで一緒に食卓を囲んで、この家で育ったあんたをうらやましいって言ってた言葉に、嘘はなかったと思うけど』

「でも……」

『あー、もう! ぶちうっとおしい娘じゃねぇ! イライラするわ!』

突然電話の向こうのお母さんが切れだす。
ガラの悪いこてこての広島弁に、ぎょっとして涙が止まった。

『それでもウチの娘か。もっと根性見せんさい!』

「根性って……」

『あんたもう十何年も、なにひとつ見返りの無い二次元のキャラクターに、ひたすら尽くして貢いできたんじゃろ。思いが報われんことなんて、もう慣れっこじゃろうが! それが、相手が生身の男になった途端、告白もできんなんて情けない娘じゃ! どうせ逃げ出して田舎に帰って来るゆうなら、最後に告白して玉砕してから帰ってきんさい! そがぁな根性なしの娘に、うちの敷居はまたがせんけぇね!』
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