腹黒王子に秘密を握られました
ひとり険しい表情で前を見据え、ずんずんと歩いて行く私を、通り過ぎる人が不思議そうな顔で見ていく。
その時、ポケットに入れていたスマホが震えだした。
取り出してみれば、実家の母からの着信。
勢いよく歩きながら電話を耳に当てると、相変わらず明るい声が聞こえてきた。
『莉央、元気にしてる? この前金子くんから泊めてもらったお礼にって、荷物が届いたのよ。お父さんには日本酒で、私には千疋屋の果実ゼリー詰め合わせ。金子くん、気が利くわよねー』
いつものように一方的に捲し立てられ、言葉に詰まる。
『また金子くんつれて遊びにおいで。お父さんも楽しみにしてるから』
お母さんの優しい声に、それまで必死に張り詰めていたものが、崩れてしまった。
「ごめ……。お母さん、嘘なの……」
『なにが?』
「金子さんと付き合ってるって、嘘なの。ただ会社で女の子に言い寄られるのが面倒だから、彼女のフリをしてって頼まれてただけなの。だからもう、一緒に実家になんて、遊びにいけないの……」
言いながら悲しくなって、ぽろぽろぽろぽろ涙が出てくる。
騙してゴメン。ぬか喜びさせてゴメン。本当は、彼氏なんかじゃないの。
「お母さん、やっぱり私、会社やめて実家に帰る……」
『なにかあったの?』
「みんなに腐女子だってバレた。もう恥ずかしくて会社に行けない。仕事辞めてそっちでお見合いでもなんでもするから」