恋の魔法と甘い罠Ⅱ
「俺も和泉も困ってるんだ」


「……」


「仕事に私情を挟んでくるなんていい迷惑だよ」



そう言ってジョッキに手を伸ばした課長は、ビールを一気に半分くらい喉に流し込む。


確かに毎日目が回るほどに忙しい営業課。


新人を教育するのに適した人材もちゃんといるはずなのに、課長の下で営業課を纏めなければならない晴希さんに指名が行くなんて、晴希さんだけじゃなく営業課自体が困るはずだもんね。



「それにな……」


「何ですか?」



あたしの顔をじっと見て、少しの間のあと小さく息を吐いた課長。



「…………いや、何でもない」


「……」



いやいや、一瞬あったその間は何!?


何でもないってことはないよね!?


けれど、口を閉ざしてしまった課長にはそのあとに続くはずの言葉を訊くことができなかった。
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