Engage Blues
「んんッ」
身体の芯が熱くなる。
大した時間は経過してないのに、すでに息が弾む。
一旦、身体を離した慶さんが服を脱いだ。
もどかしげな動きを見上げながら、思う。
どうして今まで気付かなかったんだろう。
微かな明かりの中で露わになる均整の取れた身体。
スポーツやアウトドアにはほとんど興味を示さず、読書や菓子作りといった穏やかな趣味を好むことに首を傾げてはいたけど。
先入観って恐ろしい。
多少の不可解な点があっても、都合のいい結果へねじ曲げようとも考えつかないみたいだし。
この場合、慶さんが同じ武術家の血を引いてたってことだけど。
「ぁッ!」
不意打ちのように、耳を舐められた。
意識が別な方向へ逸れていったせいで、身構える暇もない。
ぞくりとした寒気のような刺激が背中を走る。
「……梨花」
耳元で名前を呼ばれ、何を求められたか察する。
全身から力を抜いて待ってると、慶さんは顔を覗き込んできた。
「今日は、梨花の全部をくれないか?」
「…………?」
質問の意味がわからず、じっと見つめてしまう。