Engage Blues





 す、すでに全部あげちゃってますけど?

 これ以上、何をお求めデスカ?


 改まった口調に戸惑う内に、足の間にぴったりと押しつけられた。
 唇を食むようにして、囁いてくる。



「じかに梨花を感じたい」



 すでに濡れて待ってるだけの場所に先端だけを触れさせてる。
 ねだる動きは普段通りなのに、彼の行動を振り返って理解できた。



(……慶さん、ゴムしてない)



 彼は、避妊するつもりないんだ。



 今まで一度だってなかった。なりゆきで始めたって、ゴムがないからと途中で止めた。

 理屈はわかる。
 それでも、欲求不満がつらくて苦しくて。
 わたしが八つ当たりみたいに拗ねても、慶さんは絶対に折れなかった。



 だからこそ、彼の気持ちがわかる。


 互いを隔てるものがないと知ってしまったから。
 最悪の未来は永久に来ない。


 わかってしまったから、気持ちを抑えきれない。


 拒む理由はどこにもなかった。

 もう、このひとしか考えられない。

 彼の全てを受け入れたい。



 本能に近い欲求。
 恥ずかしさをごまかしながら、恐る恐る首に腕を回した。





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