Engage Blues
呆然と立ち尽くして、地面に刺さった武器を見下ろす。
棒手裏剣を打ってきた犯人より、動揺した自分の思考過程が気になって仕方ない。
だらだらと嫌な汗を背中でかいていると、頭上から手を叩く音が聞こえてきた。
……拍手?
「さすがは凰上家の次期師範……お見事です。凰上 梨花(こうがみ りか)嬢」
「その腕を見込んで、俺たちのお願いを聞いてもらえないスかね?」
顔をあげて、視界に入る光景に驚いた。
街灯の微かな光に浮かぶのは、両側の塀に立つ足。
そう、人間の足。長い足だった。
青年と思しき襲撃者ふたりが家の塀に登っていたのだ。
しかも、わたしの名前を知ってる。
待ち伏せ、通り魔、もしくは奇襲攻撃をかけるがごときの発言。
となれば、するべきことは決まってる。
「人違いです!」
即座に踵を返して走り出した。
ちッ。
遠回りになるけど仕方ない。別ルートで駅を目指そう。
素早く普段とは違う帰り道を頭の地図で描いていると、襲撃者ふたりは追いかけてくる。