Engage Blues
「ちょッ……姐さん! あっさりスルーしすぎじゃないスか!?」
「うるさいわねッ。今日は、あんたたちに構ってる暇はないのよ、子トラ兄弟!」
「その辺の野良猫みたいな言い方は止めてください、梨花さん! 俺たち、ただの双子ですッ」
慌てて言い返して、後をつけてきた。
あまりにも度を越してる接触に、わたしはTPOも考えずに怒鳴り声をあげる。
「えぇーいッ! じゃなきゃ、仕事帰りの女を夜道につけ回して棒手裏剣を投げて寄こす通り魔よッ! 痴漢よ! 変質者よ! ご近所さんの迷惑も顧みないで塀に登る悪ガキ共よッ!!」
「すみませんッ。子トラ兄弟で結構です!」
客観的な指摘で自分たちの異常性を理解したらしい。
あっさりと謝罪して受け入れる態度は素直だ。
その控え目な姿勢に免じて、話くらいは聞いてやろう。
わたしは逃げるのを止めて、彼らに向き直った。
振り返ると、背の高い男性ふたりと目が合った。
どちらも整った顔立ちで、血が繋がっているとわかる。
身体も鍛えられてるのがわかる、ぴんとのびた背筋。
それでいて、漂う雰囲気は猫科の動物っぽい。