Engage Blues
片方はメガネをかけていて物腰柔らかなのが、お兄さんの虎太郎(こたろう)。
もう片方は野性味のある、憮然とした面持ちをしているのが、弟の虎次郎(こじろう)だったはず。
かなり認めたくないけど、知り合いだ。
振り切れなかったのは、自分の甘さだと受け入れるしかない。
しかし、いつの間に待ち伏せスキルを磨いたのか。
どちらも大学三年生だったような。真面目に勉強しているか不安になってきた。
「……それで、今日は何の用?」
あんまり楽しい用件ではないこと予想しつつも訊ねてみる。
気乗りしない内心に感づいたのか、虎太郎がやんわりとした口調で手紙を差し出してきた。
「我が虎賀家次期師範からの果たし状です。四日後の午前十時に虎賀の道場に来られたしと……」
「えぇ~? あいつ、そんなに暇なの?」
受け取った手紙は封筒に便箋……じゃなかった。
時代劇でしか見られないような和紙に包まれた文である。しかも、宛名はなく『果たし状』。
当然、文字は毛筆に墨。なかなか雰囲気、出てるじゃないか。