Engage Blues










 向こうが気付いているようには見えないので、しばらく様子を探ることにした。

 慶さんと雑貨を見て回り、昼食を取り、映画館へ。
 タイミングを見計らって接触してくると思いきや、彼らはアクションを起こさなかった。


 駅の中にある店舗を物色しながら、つかず離れずの距離を保つ。


 これはこれで具合が悪い。
 いきなりデート中に偶然を装って声をかけられても(ごまかすのに)困るけど、最初から最後までずっと張りつかれても困る。

 例えば、わたしたちがホテルに入ったら彼らはどうするつもりなんだろう?
 いや、今日の予定にはないけどさ。いろいろ考えると怖くなってくる。
 学生の身分で、おかしなスキルを磨かせてはいけない。



 そろそろ潮時だな。
 これからの方針がまとまった頃、おずおずと口を開いた。


「……慶さん。ちょっと化粧直しに」

「そうか。なら、向こうの本屋で待ってるから」

「はい」

 暗にトイレへ行ってくると告げ、二手に分かれる。
 案の定、子トラ兄弟はわたしの後をつけてきた。





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