Engage Blues
フロアの近くにあるお手洗いに向かう直前、剥き出しの太い柱の影へ隠れる。
急な進路変更に子トラ兄弟は焦り、小走りで駆け寄ってきた。
「あれ?」
「見失った?」
柱と接するように置いてある靴の棚へ回り込み、子トラ兄弟たちの死角へ入る。
ただ単に障害物を利用して彼らの背後を取っただけ。
きょろきょろ周辺を探す双子たちを尻目に、カッとヒールを鳴らしてみる。
「子トラ兄弟~、あんたたら何ばしよっとねぇぇぇぇッ」
という、どこかもわからない方言で脅しをかけるのが精一杯だった。