Engage Blues










「いやぁ、姐さんも隅に置けないスね。あんな、すげー男前な彼氏がいたなんて」

「正直びっくりです」


 尾行していたことを悪びれもせず、慶さんを誉める子トラ兄弟。
 言外に軽く貶されてたりするのに、彼の評価が高いと嬉しくなってしまう。

 はにかみながら頭をかく。

「いやぁ、わたしも告白した時は付き合えるとは思ってなくてさ。しばらく夢心地な気分が続い……って、違いますッ!」

「ノリツッコミするってことは、かなり浮かれてますね?」

「いいから、何しに来たのッ。用件を言いなさい、用件をッ!」


 表情と声音で威嚇しながら、虎太郎の胸ぐらを掴む。

 危なかった。
 うっかりこいつらのペースに乗せられるとこだった。

 慶さんに気付かれないよう、手短にすませなければ。

 虎太郎の首をがくがくと揺さぶってみると、さらりと答えを返された。


「前回と同じく、果たし合いのお誘いです」

「めげないわね」

「うす。ここで諦めたら武術家の名折れッス」


 出たよ。
 武術家特有の謎なメンタリティ。





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