Engage Blues





 こいつらは、勝負を前提とした物騒すぎる思考回路をしている。

 白黒つけるのは勝負。
 次期師範を決めるのも、門下生同士で争う場合もある。

 勝負を受けないと、一生、臆病者呼ばわり。

 家格は、奥義書の数。
 ないなら、闇討ちして奪うもの。


 とても現代日本の常識から遠くかけ離れている気がする。


「うちの次期師範が希望する果たし合い、ご了承してくださいますか?」

「う~ん……」


 首を掴んだままなのに、虎太郎は涼しい顔で訊ねてくる。

 なかなかやるな。
 結構、手加減しているとはいえ苦しいはずなのに。

 さすがは、虎賀家の門下生だ。ちゃんと鍛えられてるな。


 ここで適当に頷けばよかったものを。
 ついつい長年、思っていたことを洩らしてしまう。


「つかさぁ……同じ祖先を持つ七家同士仲良くやれないもんなの?」

 わたしのひとり言で、虎次郎がきょとんと目をまるくさせる。


「そんなの考えたこともないスよ。【神武流闘術】の教えを受けた以上、頂点を目指すのが自然ななりゆきってもんス」


 思いもしなかったという主張に、あくまで食い下がってみる。





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