Engage Blues
「だから、そうやってずっと争ってるから、開祖の思いは失われたんじゃない? 実際に家が絶えたことで継承できなかった技があるでしょうし」
掴んでいた襟を離すと、ふたりは不思議そうな顔でこっちを見る。
そんな不可解なことなのかな。
ちょっと考えをずらしただけなのにさ。
存続していない流派のほとんどは、後継者不足じゃない。
奪われた奥義書と共に後継者が口封じに抹殺されるか、敗北の屈辱で自ら死を選ぶかのどちらか。
きっと、開祖はそんな未来のために指南書を残したわけじゃないでしょう。
このうまく伝えられないもどかしさ。
まっすぐ見つめてくる双子に対して、かける言葉を迷っていると。
「梨花」
聞き慣れた低い声音に、ぎくりとする。
振り返ると当然というか、慶さんがわずかに眉をひそめていた。
「どうしたんだ」
なかなか戻って来ないから、探しにきてくれたらしい。
嬉しい反面、ちょっと困った。
バッチリ背後の子トラ兄弟を見つめている。
「……知り合いか?」
「しッ、親戚の子たちです!」