Engage Blues
「しかも果たし状って……いつの時代の不良なのさ」
馴染みのないアイテム出現で、中身を見ようという気力がわいてこない。
どうやり過ごせばいいか考えている最中、虎トラ兄弟はどうでもいい話をする。
「梨花嬢、順番が逆です。過去の武闘家たちの果たし合いを、昭和の不良たちが真似たのです」
「七つある【神武拳流闘術(じんぶけんりゅうとうじゅつ)】の中で、虎賀家と対等に戦えるのは梨花姐だけスよ。今代師範の最強を決める闘いを見られるとは……光栄スね」
意味不明な指摘をする虎太郎と、パシり口調で興奮する虎次郎。
ずるずると会話するだけ、イラッとくる。
そんな事情、知ったことじゃない。早く帰って、美味しい夕飯を食べたい。
律儀な彼のことだ。きっと自分も箸をつけずに待っているに違いない。
だから、なるべく穏便に話を進めてみる。
「……あのさ。そっちの勝ちでいいから、この話なかったことにしてくれる?」
「なッ!」
おずおずと差し出した果たし状と提案に、双子の瞳が驚愕に見開かれた。
こっちの方が不思議だよ。
そんなん、ビックリするほどでもないでしょうに。