Engage Blues
うん。
あんた、最後のトドメを刺しに来たんだね?
「察しがよくて、ますます結構です。まぁ、いいじゃないですか。お互い、住む世界が違い過ぎたってだけで。これから別々に双方の生活を大切にすれば……」
「なんで、芸能人のカップルが別れた時のFAX文章みたいなコメントなのッ! それに破局前提で話が進んでるしッ!」
にこにこと笑うコウの胸ぐらを掴むも、どこ吹く風だ。
ネクタイを握りしめ、ゆさゆさ振っても表情が全く崩れない。
「あんたッ、そうやって何かっちゃ文句つけてるけど……わたしに恨みでもあるわけ!?」
「いいえ。まさか。一番まともな結果を提示してるだけですよ。そもそも、若林さんのようなハイスペックな男性とゴールインしようと思ってること自体が不毛……じゃなかった。身のほどを知らさすぎて面白いくらいで」
「今さらだけど、あんた性格が最悪だわね!」
「どうも。お褒めいただき光栄です」
めちゃくちゃ嬉しそうにコウが笑う。この変態め。
胸中で毒づいたのがバレたのか、いきなりコウの瞳がすっと冷えた。氷みたいに。