Engage Blues





 わたしには、もったいなさすぎだ。


 だから、同時に悩む。
 彼は別にわたしと一緒でなくてもいいような気がする。


 そんな不安が口からついて出てしまう。


「あの……慶さん」


 名前を呼ぶと、ボウルやジャムを手にした慶さんと目が合う。
 まず片付けから始めるつもりなんだろうな。


 きれい好きなところもある。
 料理しても片付けない男は最低だと友人たちはぼやいていた。




「もし、わたしに言えない秘密があったらどうします?」


 ずっと打ち明けられない秘密。

 こんなの卑怯だってわかってる。


 でも、慶さんと離れたくないからこそ口にできない。
 黙っていることだって同じことなのに。


 今の内に保険を手に入れておこうって魂胆なのかな。
 我ながら浅ましい考えに心底、辟易する。


 けれど、慶さんは一瞬だけ目を瞠るだけだった。
 その後は考えを巡らすようにして、しばらく視線を斜め上へ流してから。




「……それ、何か重要なのか?」



 ぽろりと謎すぎる発言をする。
 予想外すぎる返事に焦った。





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