柚と柊の秘密





「大丈夫だよ」




もう一つ新しい声がした。

あたしのよく知った声、お父さんの声だ。




「滅茶苦茶叩いて壊しちゃえばいいって。

玄さんお金いっぱいあるし」




いつもの調子でこんなぶっ飛んだ発言をする。

こんなお父さんを、やっぱり三人はぽかーんと見ていた。





三人の言いたいことは分かるよ。

うちのお父さん、テレビやライブで見るようなカッコイイキャラじゃないからでしょ。

お父さんは変なジャージを着ていて。

そして、ダサい眼鏡をかけていて。

あぁ、恥ずかしい。

健吾君がいるっていうのに!





なのにお父さんはあたしを見て、




「柊く~ん!!

お父さんも柊君のライブ見に行っていいかなぁ?」




なんて馬鹿なことを言うから、




「駄目駄目駄目!

絶対駄目ぇ!」




大声で叫ぶあたし。




「なんでぇ、酷ぉい」



「駄目なのぉ!」





もう、どっちが子供か分からない。

でもね、お父さんも入れ替わりのことを突っ込まなかったんだ。

うちはそんな家族。

あたしたちのことを考えてくれるけど、あたしたちの意見を尊重してくれるんだ。

こんなお父さんとお母さんには感謝している。



< 262 / 363 >

この作品をシェア

pagetop