風と雪
風を起こし、物をあるべき所へ戻す。
「便利ね。」
「これは利点ですね。」
そう言うと笑い合う。
「フォルクハルト。」
そう呼んで雪蘭は笑む。
「雪蘭。」
フォルクハルトも笑う。
「ありがとう。」
声を揃えて言うと2人共が驚いた。
「あはは!助けてもらったのはこっちなのに。さっきから、謝ったりお礼言ったり……」
「いえ。雪蘭を巻き込んだのは私の落ち度です。」
「馬鹿だねぇ。そんなこと、出会った時から覚悟してるって!」
「!!」
フォルクハルトはきょとんとしている。
「……わからないとでも思ったの?君と出会った時、何かあるってわかってた。このひとと関わるには、全てを懸けて覚悟しなきゃって。例え、命でも惜しみなく懸けようと覚悟したの。」
「……雪蘭。」
雪蘭を抱きしめて、フォルクハルトは名前を呼ぶ。
「命は懸けないでください。」
そう言って縋る。
「貴方は私の希望だから。」
全て失った。
もう、失いたくない。
「貴方は私が守る。その為に天界の兵士になったのですから。」
「ふふっ、君らしいよ。」
雪蘭はフォルクハルトを撫でた。
「私は必ずここへ帰ってくる。例え、どんなところに行っても。……私の希望よ。フォルクハルト。」
そう言って離れた。
「さ!片付けましょう。これじゃあ、お客様を迎えられないわ。」
「そうですね。」
そう言って片付けを再開した。
帰る場所と守るべきもの。
「イイナ。人間ラシイ。」
天使は見守る。
「さて、ここは心配イラナサソウダ。」
羽撃く音と共に姿を消した。
残ったのはいつもの光景。
誰ひとり、天使が居たとは思っていない様子でいる。
姿が見えていなかったのか、それとも無関心か。
いずれにしても彼女達は役目を果たし続ける。
人間を守る神。
創世主であり救世主。
正義と謳われるそのひとのために。
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