吸血鬼、頑張ります。
吸血鬼の問に答え、いよいよ自分は人の部類では無いと実感してきた鉄観音は、
幼い頃から刷り込まれてきた幾つかの習慣や儀式を思い出していた。
不老不死と不死身の属性は、物語として母親から聞かされ、虔属を作る儀式に於いても遊びの中で覚えた。
もっとも、空想や絵空事の様にしか捉えて居なかったが、成長と共に、忘れられない記憶として、鉄観音に染み込んでいた。
高校入学と同時に家を出て、全寮制の高校へ進学した。
大学の付属だった為に、自動的に大学に入学し、人と何ら変わらない生活を送っていた。
両親は既に海外へ行ってしまっていたので、ある程度の財産を切り崩し生活を送っていた。
大学卒業後は、定職に就かず、アルバイトをしながら日々を消費し、人として在るための努力をしていた。
時折発作的に起きる、吸血したい欲求は、自分を噛みながらごまかしていた。
前にも書いたが、吸血鬼の本当の人生(鬼生)は、人の寿命が終わった時から始まる。
人である間に虔属を作り、力を譲り受け、吸血鬼である事を時間を掛けて認識する。
吸血鬼に生まれ変わった時に、認識が乏しい場合暴走を引き起こすからである。
それを防ぐ措置として、執事が生前から力を譲渡するまで、道を示してくれる。
鉄観音は、長い間、吸血鬼である設定は信じていたものの、虔属は作らなかった。
最初に作った虔属が、不老不死属性のゾンビと言うのは、かなりのレアケースであった。