その瞳をわたしに向けて
「立花さん、帰るよ」
杉村常務が立花の腕を掴んで引っ張り上げる
ほろ酔いながら会話を楽しんでいた周りの社員達が、一瞬にして常務と立花に視線を向けて、少し静かになった
目の前にいる杉村常務に頭をふるふると振る立花
「たかやしゃん、今日はわらしはたなきゃさんのおうちに泊めてもらぅんれす………れすから、帰りましぇん」
どれだけ飲んだのか、完全に呂律が回ってない
「なに言ってるんですか、こんなになって田中さんのご家族にご迷惑でしょ」
呆れた顔して溜め息をつきながら立花の腰を腕で支え、連れて行く
「松田、悪いが立花さんの荷物を持ってきてくれ」
少し大きめの立花の鞄を松田が持って、立花を抱えた常務に続いて立ち上がった
「田中さん、悪かったね。連れて行くよ」
三人が出ていって暫くすると、また宴会か始まった。少しザワザワと今の出来事を酒の肴にしているグループもいるようだ。
美月は気になって、こっそり三人の後を追った
大通りから少し外れた宴会専門の居酒屋で、近くにパーキングがあり、一台の車の助手席で立花はすでに眠り込んでいた
運転席側のドアに凭れて煙草を吹かしている杉村常務と、立花の荷物を車の後部座席に乗せる松田の姿を見つけた
二人が何を話しているかは、聞こえない。
辺りは暗いし、もう少し近づいても大丈夫だろうと顔を出したら………
やばっ…………
松田と完全に目が合った。
少し話をしている二人、杉村常務がはぁっと溜め息を吐いて吸っていた煙草を車の灰皿で消すと、そのまま運転席に乗り込んだ。
車が走り去って、松田が一人そこにいた
何話してたんだろう………