キミに出会うまで
翌朝、てっちゃんは昨日と変わらない様子で出勤してきて。


テキパキと仕事をこなしていった。


商品知識もあるし、売上データも覚えていて。


仕事面では尊敬できるけど。



なんで、不倫しちゃったんだろうな。


その罰を今、受けてるのかな。




「・・・おい、坂本」


「は、はい!」


まずい、ボーッとしてて、優樹に呼ばれてるのに気づかなかった。


「なにボサッとしてんだよ、休憩明けに資料持ってきとけ」


「すみません、用意します」


優樹、怒らせちゃったな。


トイレで手を洗って気持ちを切り替えて、資料室へ向かった。




頼まれた資料を持って会議室へ戻る途中、てっちゃんがこっちへ向かってきた。


会釈だけして通り過ぎようとしたら、


「持ってやるよ」


と声をかけてきた。


「大丈夫ですから」


方向転換してかわそうとしたら、足がついてこなくて足首をひねり、コケそうになった。


「わっ」


「おっと」


倒れる、と覚悟した瞬間、てっちゃんの腕が私を支えて倒れずにすんだ。


「す、すみません」


「アイツ、すげー顔してニラんでる」


「えっ?」


振り返ると、優樹が私たちを見ていて、そのまま何も言わずに通り過ぎた。


「俺たちが抱き合ってるって思ったんじゃね?」


楽しそうに笑うてっちゃんの腕をふりほどいて、会議室へ向かった。



「ゆ・・・じゃなくて、森さん、誤解です」


「落ち着けよ、わかってるから」


「でも・・・」


「仕事中だぞ、切り替えろ」



そのあとは、目も合わせてくれなかった。


やっぱり、怒ってるよね。








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