キミに出会うまで
タクシーが出発してしばらくすると、スマホが優樹からの着信を知らせた。


今は、何も信じられない。


スマホの電源を切った。



少し冷静になって考えてみれば、あの部屋は優樹と元カノが4年も暮らした部屋だ。


テーブルもソファーもお風呂も、元カノと過ごしているんだ。


そして、ベッドでは、二人でエッチしてたんだ。


捨てられないマグカップも、元カノ好みの家具も。


結局私は、元カノの身代わりでしかなかったんだ。



人間、あまりにもショックだと、涙も出ないと知った。



これからどうしよう。


きっと、和真さんを通じて、明日香先輩やひとみちゃんに連絡がいくだろうし、ふたりとも夏休みに出かけるって言ってたから、迷惑かけられないし。


とりあえず、お母さんに『今日は友達と飲むから遅くなるね』ってメールした。



タクシーが渋谷に着いた。


夜9時の渋谷は、若者であふれかえっていて。


みんな楽しそうなのに、私はひとりぼっちで、誰もいない。


急に疲れが出て、座りたくなって。


駅前のネットカフェに入って、朝まですごすことにした。



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